リード文:SES業界は、IT業界平均より高い離職率が課題です。3年以内の離職率が30%を超える企業も多く、人材育成への投資が無駄になる状況が生じています。本記事では、SES業界の高い離職率の具体的な原因、エンジニア側の離職理由、企業側の対応状況、そして業界全体の改善動向を詳しく解説します。
SES業界の離職率の現状
SES業界の平均離職率
日本の人事部と矢野経済研究所の調査によると、2024年のSES企業の平均的な3年以内離職率は以下の通りです。
- 大手企業(従業員500名以上):15%~20%
- 中堅企業(100~500名):25%~35%
- 小規模企業(50名以下):35%~50%
業界比較での離職率
参考として、他のIT関連産業との比較です。
- SES業界:3年以内離職率25~30%
- 事業会社(IT部門):3年以内離職率12~15%
- メーカー:3年以内離職率10~12%
- コンサルティング:3年以内離職率18~22%
世代別の離職傾向
SES企業での離職は、特に若年層に集中しています。
- 新卒1~2年目:離職率20~25%
- 入社3~5年目:離職率15~20%
- 入社5~10年目:離職率8~12%
- 10年以上:離職率2~5%
SES業界での離職理由
| 離職理由 | 割合 | 対象グループ | 主な課題 |
|---|---|---|---|
| 給与・待遇への不満 | 35% | 全世代 | 事業会社との給与格差 |
| キャリアの不安定性 | 28% | 20代 | 長期キャリアパスの不明確 |
| 人間関係・孤立 | 22% | 20代 | 常駐先の環境変化 |
| スキル習得不足 | 18% | 20代 | 深い技術学習機会の欠如 |
| 企業内教育の不足 | 15% | 新卒者 | 研修制度の不充実 |
| 福利厚生への不満 | 12% | 全世代 | 退職金制度なし等 |
離職理由の詳細分析
給与・待遇への不満
最も一般的な離職理由は「給与・待遇への不満」で、全体の35%を占めています。具体的な課題は以下の通りです。
- 事業会社の同等職との給与格差(月額5万円~20万円低い)
- 昇給ペースが遅い(年間昇給額が1,000円~3,000円程度)
- ボーナスが不安定(業績連動型で変動幅が大きい)
- 手当が少ない(常駐手当なし、または月額3,000円以下)
キャリアの不安定性
キャリアの不安定性は、特に20代の若手エンジニア(28%)が感じる課題です。
- 3~6ヶ月ごとに配置先が変わり、長期的なスキル習得が難しい
- 5年目以降のキャリアパスが不明確(管理職の枠が限定的)
- 派遣元企業での昇進機会に乏しい
- 35歳以降のキャリア継続に不安を感じる
人間関係・孤立感
常駐先での人間関係リセットが心理的負担になっています。
- 3~6ヶ月ごとに人間関係が構築される必要がある
- 派遣元企業との関係が希薄になり、相談相手がいない
- 常駐先チームの一員と見なされず、孤立感を感じる
給与・待遇による離職の詳細
給与相場の現実
SES企業と事業会社の給与格差を具体化します。
- 新卒時点:SES 300万円 vs 事業会社 300万円(差なし)
- 3年目:SES 350万円 vs 事業会社 370万円(20万円差)
- 5年目:SES 420万円 vs 事業会社 500万円(80万円差)
- 10年目:SES 500万円 vs 事業会社 650万円(150万円差)
昇給・昇進の機会格差
SES企業では、昇進機会が限定的という課題があります。
- 管理職(課長級)の枠が全体の5%~10%(事業会社は20~30%)
- 50代までプレイヤーのままで、昇進の道がない
- スペシャリスト職の給与が管理職と同等レベルで、昇進の動機が生じない
離職防止の対策
年収アップの交渉術や案件選択のコツは、SESで年収UPを実現|単価交渉・案件選択・キャリア戦略を参照してください。
企業側の対策
離職率を下げるため、先進的なSES企業で実施されている施策です。
給与・待遇の改善
- 基本給を相場より10%~15%高く設定
- 定期昇給の仕組みを明確化(年1回、月額2,000円~5,000円)
- 常駐手当を月額8,000円~15,000円に設定
- 資格取得支援による給与加算(合格時10万円~30万円の給付金)
キャリアサポートの充実
- 明確なキャリアパスの提示(スペシャリスト、管理職、コンサルタントの3つの道)
- 月1回以上のキャリア面談の実施
- スキル習得に基づいた給与交渉の機会提供
- 長期キャリア設計への支援(5年後、10年後のビジョン設定)
人間関係・メンタルケア
- EAP(従業員支援プログラム)の提供
- メンタルヘルスカウンセリングの定期実施
- オンライン勉強会などの社内コミュニティ構築
- 常駐終了後の1~2週間の休暇設定
エンジニア側の対策
離職を防ぐため、エンジニア自身ができることです。
- 給与交渉:年1回の人事評価時に、スキル習得を根拠に交渉
- キャリア相談:派遣元企業と定期的に面談し、長期計画を立てる
- スキル習得:資格取得やプロジェクト完了による市場価値向上
- メンタルケア:メンタル不調を感じたら早期に相談する
業界全体の改善動向
SES業界が抱える構造的な問題点については、SES業界の問題点と解決策|ピンハネ・労働環境・法整備でも詳しく解説しています。
給与相場の上昇傾向
2024年~2025年のSES業界では、人材不足を背景に給与相場が上昇しています。
- AWS、Python等の高需要技術のエンジニアに対し、月額10万円~20万円の給与アップ
- 大手SES企業による新入社員の給与引上げ(月額2万円~5万円)
- 資格保有者への給与加算制度の一般化
キャリアパス整備の動き
先進的なSES企業では、以下のような取組が進行中です。
- スペシャリスト職制度の導入(管理職と同等の給与レベル)
- 複線型キャリアパスの構築(スペシャリスト、管理職、コンサルタント)
- 年間キャリア面談の義務化
福利厚生の充実
離職対策として福利厚生の充実も進んでいます。
- 退職金制度の導入(未導入企業が多かった)
- 在宅勤務制度の拡充
- 資格取得支援の充実化
離職しにくい優良SES企業の特徴
確認すべきポイント
以下の特徴を持つSES企業は、離職率が相対的に低い傾向があります。
- 3年以内離職率が20%以下(業界平均より低い)
- 基本給が経験年数に応じて明確に設定されている
- ボーナスが基本給2ヶ月分以上
- 月1回以上のキャリア面談が実施されている
- 資格取得支援制度があり、合格時の給付金がある
- 退職金制度が整備されている
- 在宅勤務可能な案件が豊富
- 大手企業への配置実績が豊富
SESから次のステップを考えている方は、SESからステップアップ|正社員・独立・キャリアチェンジの道も参考にしてください。
まとめ
SES業界の高い離職率は、給与・キャリアの不安定性、人間関係の課題など、構造的な課題から生じています。
- 現状:SES業界の3年以内離職率は25~30%(業界平均より高い)
- 主原因:給与待遇(35%)、キャリア不安定性(28%)、人間関係(22%)
- 給与格差:5年目で月額80万円、10年目で月額150万円の差
- 企業側対策:給与改善、キャリアサポート、メンタルケア充実
- 業界改善:給与上昇、キャリアパス整備、福利厚生充実の動き
著者情報
株式会社HLT 編集部:SES・人材派遣業界に20年以上の実績を持ち、エンジニアの定着率向上とキャリア支援を重視する企業です。本記事は業界経験に基づいて作成されました。
参考文献・出典
- 日本の人事部「IT業界の離職率に関する調査」(2024年)
https://jinjibu.jp/ - 矢野経済研究所「SES業界の人材確保と離職に関する調査」(2024年)
https://www.yano.co.jp/ - 厚生労働省「雇用動向調査」(2024年)
https://www.mhlw.go.jp/

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